Dr.輝夫コラム
誤嚥について
よくお正月になると、お餅をノドにつまらせて窒息死する事故のニュースが報道されます。
子供がミニトマトやブドウ、飴玉やマメ類をノドにつまらせて死亡する事故は日本では年間20人にもなるようです。
アメリカでは、年間70人との報告も有ります。
どうしてこのようなことが起こるのかと言えば、食物が口から入り、食道に行く通路と空気が鼻から入り(鼻が詰まっている場合は口から)
肺に入る通路が咽頭で交差しているからです。
その咽頭部の管に食物がつまって動かなくなってしまうと、肺への空気の通り道が塞がれて窒息してしまうことになります。
その窒息が5分も続けば命が危ぶまれることになります。
このような構造が原因で起こる問題で誤嚥もあります。
これは、本来は口から入った食物は、咽頭を経て食道に入るべきなのですが、間違って肺に入ってしまうことから起きる現象です。
前述したように、口からの食物も、鼻からの空気も同じ咽頭を通り振り分けられています。
呼吸は四六時中しなければないのですが、食事は限られた時間なので常に肺の入り口は開いています。
ということは、食物が空気が入るべき肺に入ってしまうリスクが常に存在しているということです。
では何故そんな危険な構造なのに誤嚥事故が通常は発生しないかというと、
食物が咽頭部に入ると肺の入り口にある喉頭蓋という蓋が閉じて食物が肺に入らないようにする反射機能が人には備わっているからです。
その機能が老化したり、各種神経筋機構のマヒにより鈍ってしまうと、食物が咽頭に落ちてきても喉頭蓋が閉じず肺に入ってしまうのです。
これでよく起こることが誤嚥性肺炎です。
肺炎は日本人の死亡原因の第3位であるようですが、その肺炎の多くは誤嚥が原因と言われています。
誤嚥しないような取り組みも大変重要なことですが、たとえ誤嚥したとしても口腔ケアが十分であれば、
肺炎の発症を抑えられるとのデーターも有ります。口腔衛生に留意しましょう。
食事と呼吸という生きて行く上で非常に重要な機能が、かなり危うい反射機構により維持されていることが不思議ですよね。
そう思われるのも当然のことです.動物一般、ネコもイヌもすべてこんな危なっかしい構造にはなっていません。
み呼吸のための気道と食物の移動経路は交差しないようになっています。
進化の頂点に君臨する人間がなぜこのような構造になった理由は、肺から出た空気を口から出して種々の音を発声できるようにするためでした。
コミュニケーションのツールとなる多種の言葉を使えるようにするために、生きるために根源的な呼吸機能と摂食機能をリスクに晒せることを進化の過程で選択したのだと思います 。
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