Dr.輝夫ブログ

高齢者と虫歯

高齢者と虫歯

 『若い時は虫歯で歯を失うことが多く、高齢者は歯周病で歯を失うことが多い』と言われるのをお聞きしたことがあると思いますが、これは虫歯になりにくかった方も、高齢になると歯周病で歯を失うことがあるということで、高齢になったら虫歯にならないということではありません。虫歯になりやすさには個人差がありますが、どんなに虫歯になりにくい人でも、エナメル質に覆われていない部分はそうでもありません。ですから、虫歯になりにくかった人でも、高齢になって歯肉が痩せてきて、エナメル質に被覆されていない歯の根の部分が露出するようになると虫歯ができます。歯肉が痩せることによって困ることは、歯の形が歯冠部と言われる最初から露出している歯の部分より、歯根部と言われる、歯肉に覆われ骨に支えられている部分の方が細いことです。そのため歯肉が痩せると歯と歯の間に隙間ができてくることと、歯の生え際の部分が凹んできて食片残渣が溜まりやすくなることです。また、凹んでいる部分やトンネル状になる箇所もできてくるので、歯ブラシできれいにするのが難しくなります。よく、若い時は歯医者に通うことなどなかったのに、この歳になって虫歯で苦労するとは思わなかったと言われることがありますが、理由は高齢により歯肉が痩せて、耐酸性の低い部分が露出することと食片残渣が残りやすくなるからです。

 

高齢者と歯周病

 歯周病は年齢を重ねるにつれて徐々に悪化するということが統計的にも実証されていますし、臨床実感でもそう感じます。どうしても、高齢になると歯を支える歯槽骨が退縮し、それに伴い歯肉も後退して、歯と歯肉の間に歯周病菌の棲家であるプラークが溜まりやすくなるので、歯周病原因菌も活発に活動しやすくなるからです。

 その他にも高齢者は、唾液の分泌量が少なくなることや、免疫力が生体機能の低下により弱くなることも影響して歯周病が悪化すると言われています。

 歯槽骨が退縮することにより歯根が骨に埋まっている量が少なくなるので、歯は噛む力によって動かされやすくなります。そうして噛む力で歯が揺らされると余計に歯は揺れてきます。

 

高齢者と歯の破折

 歯は1才になる前から乳歯が生えてきて、2歳半ぐらいになると上下20本の乳歯列が完成します。そして、5歳くらいになると永久歯が生えてきて、乳歯も永久歯に置き換わって、おおよそ12歳で上下28本の永久歯列が完成します。それ以降は生え変わることがないので、70代の方の歯は60年くらい使い続けていることになります。骨や皮膚を含め多くの人間の組織は新陳代謝して形は同じようでも細胞は置き換わりますが、歯はそのようなことはありません。歯は人の体の中で一番硬い組織ですが、経年劣化は避けられません。

 虫歯になって、歯を削って詰め物をしたり、冠をかぶせた歯は一見強そうに思われている方もいますが、それらの人工物は元の歯を削って被覆しているので、治療してない歯に比べると相当弱くなっています。また、虫歯の程度がひどく歯の神経を取ってしまった歯は歯の中に血液の循環がなくなっているので、極端に言えば、枯れ木のような状態になっています。

 

アルツハイマー病と歯周病

 歯周病と糖尿病の相互関係については多くの方に認知されていると思いますが、歯周病に罹患しているとアルツハイマー病にかかりやすいという調査結果が多く報告されています。また、アルツハイマー病で死亡した患者さんの脳組織からは、代表的な⻭周病の原因菌であるPorphyromonas gingivalis (P.g.菌)の出す毒素(ジンジパイン)が⾼頻度に検出されていますが、正常なヒトの脳組織では検出されない、という報告もあるようです。

 その原因は歯周に生息しているPG菌が歯肉の出血に伴い血管に侵入し、細菌が脳に侵入することを防ぐ血液脳関門の透過性を高め脳に侵入し、ジンジパインという毒素を脳の中に撒き散らすことだとされています。

 歯周に生息する細菌は歯肉に炎症が存在すると容易に血管内に侵入することができます。血管に侵入した細菌は血流を介して全身を駆け巡ることになります。ですから、歯周病が糖尿病、心筋梗塞、脳卒中など多くの病気の原因になり得るのです。

中村歯科クリニック

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